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画像の解像度「pixel」「dpi」「ppi」とは?
PhotoshopやIllustratorを扱っていると必ずぶつかる壁、それが「解像度」です。
「pixel(ピクセル)」「dpi(ディーピーアイ)」「ppi(ピーピーアイ)」…。これらは似ているようで、役割が全く異なります。 ここを理解していないと、「Web用に作った画像が印刷したらボケボケになった」「印刷用のデータをWebに上げたら巨大すぎて表示されない」といったトラブルが起きてしまいます。
本記事では、これら3つの単位の違いと正しい使い分けを2025年の最新事情も踏まえて解説します。
また、Illustratorの「ラスタライズ効果設定」に出てくる数値の意味についても触れ、なぜこの数字が重要なのかを紐解きます。
「解像度」には、2つの意味がある
混乱する最大の原因は、「解像度」という言葉が2つの意味で使われていることです。
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絶対的な量「pixel」
画像のタテヨコの大きさ。データの総量。 -
密度の濃さ「dpi / ppi」
1インチの中にどれだけ細かく詰まっているか。
この2つは区別します。
1.【pixel(ピクセル)】= 画像の「絶対的な大きさ」
pixel(px)は、デジタル画像を構成する最小単位の「四角い点」のことです。 デジタル画像は、色のついたモザイクタイルの集合体。このタイルの1つ1つがピクセルです。
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特徴
デジタルデータそのもののサイズ(容量)を決定します。 -
Web/画面では
「pixel」こそが正義です。WebサイトやSNS用の画像を作る際に重要なのは「横幅が何pxあるか」だけであり、後述する「dpi/ppi」は基本的に無視して構いません。 - ポイント
「1000px × 1000px」の画像は、誰のパソコンで見ても「1000個の点の集まり」として表示されます。
2.【dpi / ppi】= 画像の「密度の濃さ」
これらは、画像を「物理的なサイズ(紙や画面上のインチ)」に出力する時に初めて関係してくる単位です。
ppi (Pixels Per Inch)
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読み方
ピーピーアイ(ピクセル・パー・インチ) -
意味
1インチ(約2.54cm)の線の中に、何個のピクセル(点)が並んでいるか -
用途
主にモニター表示や画像のプロパティ設定で使われる-
数値が高い(高解像度)= 密度が濃い = キメが細かい
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数値が低い(低解像度)= 密度が薄い = 粗い
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dpi (Dots Per Inch)
-
読み方
ディーピーアイ(ドット・パー・インチ) -
意味
1インチの線の中に、プリンターが何個のインクの粒(ドット)を打てるか -
用途
主に印刷の現場で使われる
2025年の常識: 厳密には「画素(ppi)」と「インクの点(dpi)」は別物ですが、デザインの現場では「ppi ≒ dpi」とほぼ同じ意味(密度の単位)として扱って問題ありません。Photoshopの画面上でも事実上イコールとして扱われます。
なぜ「Webは72」「印刷は300〜350」なのか?
ここが一番の重要ポイントです。用途によって必要な「密度」が異なります。
印刷の場合:300dpi 〜 350dpi が必須
紙に印刷する場合、インクの点は非常に細かいため、高い密度が必要です。 密度が低い(例:72dpi)画像を印刷しようとすると、1つ1つの点が引き伸ばされて、カクカクとした粗い仕上がり(ジャギー)になってしまいます。
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一般的な印刷物:350dpi(迷ったらこれ!)
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新聞など:200dpi程度(紙質が粗いため)
Web / モニターの場合:実はdpiの設定は関係ない?
昔から「Web画像は72dpi」と言われてきました。しかし、2025年現在、この「72」という数字に技術的な縛りはありません。
Webブラウザは「ピクセル数(px)」しか見ていません。 例えば、「横幅1000px」の画像であれば、解像度設定を「72dpi」にしようが「3000dpi」にしようが、モニター上では全く同じ大きさ、同じ画質で表示されます。データ容量(KB)も変わりません。
実践:Illustratorの「ラスタライズ効果設定」で理解を深める
ここまでの理論が、実際の制作現場でどう使われているかを見てみましょう。 Illustratorで「効果」メニューから「ドキュメントのラスタライズ効果設定」を開くと、「解像度」という項目があり、以下の選択肢が出てきます。

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スクリーン (72 ppi)
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標準 (150 ppi)
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高解像度 (300 ppi)
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その他
なぜIllustratorにこの設定があるのでしょうか? Illustratorは本来「計算式(ベクター)」で描画するため、解像度という概念がありません。いくら拡大しても滑らかです。 しかし、「ドロップシャドウ」や「ぼかし」といった効果を使う時だけは、計算式ではなく「ピクセルの画像」を内部で生成して表示しています。
この時、「どのくらいの密度(ppi)でその影の画像を生成しますか?」と聞かれているのがこの設定なのです。
各選択肢の使い分け
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スクリーン (72 ppi) Web用、モニター表示用です。 密度が低い分、データの処理が軽く、画面上で見るには十分な画質です。ただし、この設定のまま印刷すると影の部分がギザギザになります。
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高解像度 (300 ppi) 印刷用です。 印刷に必要な「密度の濃さ」を確保するために、影やぼかしを細かく生成します。データは重くなりますが、印刷した時に美しく仕上がります。DTPの現場ではここを必ずチェックします。
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標準 (150 ppi) 家庭用プリンターでの簡易出力や、高解像度ディスプレイでの確認用など、上記2つの中間的な用途で使われます。
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その他 大型の看板など、特殊なサイズや距離で見る媒体を作る際に、手動で数値を入力します。
このように、ソフトの初期設定として「72(スクリーン用)」と「300(印刷用)」が明確に分かれていることからも、目的に応じて「pixel(Web)」と「dpi/ppi(印刷)」の概念を使い分ける重要性がわかります。
まとめ:結局どう設定すればいいの?
Photoshopなどで新規作成する際の「結論」は以下の通りです。
ケースA:Webサイト・SNS・バナーを作る場合
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単位:pixel(ピクセル)を基準にする。
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解像度:72 ppi でOK。
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実は300ppiにしても表示は変わりませんが、「スクリーン(72ppi)」の設定に合わせておくとデータが軽く、扱いやすくなります。
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サイズ:必要な表示サイズの2倍のpx数で作る(高画質ディスプレイ対策)。
ケースB:チラシ・ポスター・名刺を印刷する場合
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単位:mm(ミリメートル)やサイズ(A4など)を基準にする。
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解像度:350 ppi (dpi) が必須。
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注意点:ネットで拾った画像(大抵72dpi)を、無理やり「画像解像度」の数値だけ350に変更しても、画像がぼやけるだけです。元から大きなピクセル数を持っている必要があります。
早見表:間違いのない解像度設定
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用途 |
目安の解像度 |
重要な単位 |
備考 |
|---|---|---|---|
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Web / モニター |
72 ppi |
pixel |
ピクセル数が全て。dpi値は表示に影響しないが、72が標準。 |
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カラー印刷 |
300〜350 dpi |
mm / cm |
チラシ、カタログ、写真プリントなど。 |
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モノクロ印刷 |
600〜1200 dpi |
mm / cm |
漫画の原稿、文字のみの書類など。 |
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大型看板 |
100〜200 dpi |
mm / cm |
遠くから見るため、実は粗くて大丈夫。 |
「pixelは数」、「dpi/ppiは密度」。 この違いさえ覚えておけば、もう解像度で迷うことはありません!
