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両面が同じデザインの印刷物でも印刷代金は「2版分」が必要
素人目に印刷代金の明細をマジマジ眺めてみますと、意外な疑問点に出くわすことがあるものです。
印刷業者に”表面と裏面が全く同じデザイン(内容)”の「4色両面フルカラー印刷」のチラシを依頼した時の話です。
物理的に「1枚の版」で両面が刷れそうですし「刷版(印刷用のハンコ)の代金は1枚分」で済むと考えられます。
依頼者側としても”両面が同じデザイン”ですから当然、印刷会社へ渡すデータは「ai(Illustrator)ファイル「1点のみ」となります。
ところが見積書の明細欄を確認しますと「刷版代:4C×0C(4色×0色)」となっているべきところが、「4C×4C」と記載されているのです。つまり「2版分の刷版代金」が入った金額となっているのです。
これは一体どういうことでしょうか?
このような疑問が出たなら、印刷会社に問い合わせて確認することが一番とは思いますが、お金のことって、なんとなく聞き辛く抵抗感が出てきたりします。
と言うワケで、今回は【 表・裏が同じ内容の両面印刷であっても「2面分の刷版代金」が必要な理由 】について深堀りしていきたいと思います。
わかりやすく{一般家庭でのプリンター印刷の流れ}と{印刷所での印刷の流れ}を対比させながらのご説明となります。
一般家庭の「PC用プリンター」で{両面カラー}を 大量印刷する場合
ご自宅のプリンターで{両面カラー}を大量に刷る場合、通常どのように設定されますでしょう?
両面を「同時印刷」した場合
まずは同時印刷ができる「両面印刷」を選択した場合、
- PC画面で「 両面印刷を選択 → 印刷スタート」します。
これで両面印刷された印刷物がプリンターから排出されます。
これが、もっとも一般的かつ効率的な方法かと思われます。
両面を「片面ずつ印刷」した場合
次は別の発想に置き換えて「片面づつ」2回に分けて印刷するとなると、どうなるのでしょう?
- まずは「表面のみ大量に印刷」します。
→ 次に表面のインクをいったん「紙を空気にさらして」乾かします。
→ 再度「プリンター」に用紙をセットし直し「再スタート」かけます。
→ 裏面印刷が終われば両面印刷が完了となります。
このような「1枚の紙をひっくり返して2回に分けて刷る」印刷方法の場合、”仕上がり具合”や”かかる時間”にリスクが伴ってくるのです。
この方法では、紙の静電気の発生具合が最初の表面印刷の時とは違ってきていて”プリンターのセンサー感知”が微妙にズレて{印刷面のズレ}が起こりやすくなる上に{紙詰まりの頻度も高く}なっているのです。
結果的に「片面づつ」2回に分けて印刷した場合のリスクとして挙げられるのは、
- 「不良品」が多く排出される
- プリンターが「紙詰まり」を起こして幾度も「停止」してしまう危険性がある
- 不具合の度に「プリンターの調整」と「再スタート」が必要になる
- ボツ印刷紙が出ることによる「不足分の用紙の補填」と「刷り直し」が生じる
- 「ムダな時間・費用・品質劣化の発生」で、非効率かつストレスが生じる
というように良いことがまるで無いのです。
印刷業者が扱う「大型輪転機」で{両面カラー}を 大量印刷する場合
次に、このようなケースを【 印刷業者が扱う大型輪転機での大量印刷 】に置き換えて検証していきます。
両面を「同時印刷」した場合
印刷所で通常行われている「同時・両面印刷」の場合では、
- 印刷の元となる「刷版」を製作して
→ その版を印刷機に取り付け稼働させるワケですが
→ 「表面・裏面の両面分の刷版2枚」を{同時に設置}する必要があるのです。 - 2面あると「両面を同時に刷る」ことができるので、例えば、印刷中に紙詰まりが起こり停止することがあっても「挟まったボツ紙」1枚を抜き取る程度の不具合で済むので ”トラブル頻度は最小限”に抑えられるのです。
両面を「片面ずつ印刷」した場合
次に「刷版1面」だけを使用した場合についてですが、まずは表面(片面)を 刷って乾かしてから、裏面を刷るために再度「印刷物をセットし直して」刷っていきます。
上記で検証した「一般家庭のプリンター印刷」と同様に、この場合も多くのリスクを伴います。
- リスク回避のために、あらかじめ、あらゆるトラブルを想定した準備が必要となります。
- まずは、最初の表面印刷の工程で枚数を余分に印刷しておく必要が出てきます。
但し、予め多めに印刷しても裏面印刷の工程で{予想を超える不良品が出てしまうリスク}も含んでいます。
そのため、表面からの刷り直し分が発生した場合には、再度刷り直します。 - 結果として、品質が落ち・費用がかさみ・製作時間が押した挙句、納期遅れに繋がり、新たなクレーム原因も重なって謝罪に追い込まれた挙げ句、信用を失墜する可能性もが出てくるのです。
- これでは{総・生産力が落ちる}上に{印刷機の故障に伴うメンテナンス頻度}の増大と{維持費や生産時間}の膨らみで、会社自体の存続も危ぶまれる危険性も秘めています。
以上のようなリスクが想定できます。
例え「両面が同じデザイン」であっても「版を2面」作成してから表面・裏面を同時印刷する方法を選ぶ方が、よりコストダウンに繋がるようです。
それゆえに「刷版代金は1枚分」ではなく「2枚」必要となってくるワケです。
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